神道の成立

「神道の成立」は、高取正男が昭和54年に発表した著作です。題名からは、太平洋戦争でイデオロギー的根拠として利用されたいわゆる「神道」の歴史的成立過程の話かと思われそうです。しかし高取の関心はむしろそれ以前、古代から連綿と続く民俗的な習俗、アニミスム的な信仰が、外来の宗教の体系的な影響を受けて、ひとつの自覚的な信仰形態に至る過程にあります。

なんでこんな主題が面白いのかと言われても、自分でも実は分らないのですが、読みだすと面白くて止まらないのです。

日本の民俗的信仰は、最新科学として導入された仏教と道教によって理論的にも習俗としても大きく変貌を遂げていきます。仏教と道教を日本の信仰の基底に響く通奏低音にでも例えれば美しくなるのでしょうが、その実態は陶酔と拒否を繰り返す不協和音だと言ったほうがより近いものでした。

高取はそのような日本の信仰形態の分析を、いわゆる民族学的な構造的アプローチではなく、日本人の生活感情のレベルまで降りていくことことから始めます。事件は現場で起こっているんだ、とでもいうような地味なアプローチがこの人の持ち味です。特に天皇家および古代の貴族階級における忌避の意味と具体的な葬制、祭事の分析が興味深かったです。

ところで今日は休みだったので、K-20に引き続いて現代の葬儀における納棺師を描いた映画「おくりびと」を見ました。こちらも評判どおり面白かったです。

ちょっとディープな著作と映画が続いたのですが、東郷青児美術館で能天気に明るい「元永定正展」 を見てきました。元永定正は、僕の好きな作家です。子供のときにしか見えない不思議の世界を描ける稀有な作家だと思います。ちょっと作品数が少なかったけど、入場料500円では文句も言えませんね。

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