ユング心理学と仏教

良い本というものは必ず、知識が広がる方向のリンクをもたらしてくれる。その本が別の主題への興味をかきたてることもあるし、直接に他の本を参照していることもある。例えば「魔女ランダ考」があまりに面白かったので、そこで参照していたユング派の心理学者河合隼雄の本を借りてしまった。

結局「魔女ランダ考」は中古本を買ってしまったのだが、改めて届いた同本の索引を見てみると、意外なことに河合隼雄は参照されていなかった。「魔女ランダ考」で分析されたバリ島における東洋的な死生観から、僕の興味がユング心理学的な世界へと拡大した影響で、無意識に日本のユング派の草分けである河合隼雄が僕の頭の中で勝手にリンクを行ったと考える。もちろん単なる記憶違いだったかもしれないが、僕は自信のあいまいな記憶も、知的広がりをもたらす装置として機能していると考えているのだ。

河合隼雄の話は分かりやすい。今回借りた「ユング心理学と仏教」は1995年に米国で行われた講演会の記録なので、尚更当時の米国人にも理解できるような内容となっている。心理学はその時代から理論的にはるかに洗練されているのだろうが、河合隼雄の行った自我と自己に関する東洋と西洋の比較論的考察は、いまでも輝きを失っていないと思う。

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