死霊解脱物語聞書

死霊解脱物語聞書(しりょうげだつものがたりききがき)

夏はやっぱり怪談でしょう。エアコンなしで寒くなれるしので、エコだし。

というわけで、選んだのが江戸時代最も人気のあった怪談である「累ヶ淵」(かさねがふち)の物語。下総の国、今の茨城県の小さな村で起きた連続死霊憑依事件を、事件の顛末を当事者に取材し、その真相に迫ったルポルタージュが、「死霊解脱物語聞書」である。お菊やお岩の物語ほど知られていないが、これは江戸時代に最も注目され、芝居などに取り上げられた人気の事件なのだ。

内容は殺人とそれに端を発した女性への憑依の物語だ。それを後に仏教界の大立者となる青年僧祐天が解決するという話だが、面白いのは僧祐天が法力を使って解決するのではなく、ひたすら知識と論理で霊に対抗することだ。また語り手は事件の第三者として関係者に取材し、第三者的な視点から物語の再構成を試みる。

これは現代で言えば、知識人の代表である大学の教授が、その知的能力を用いて合理的に事件を解決する、という感じだろうか。江戸時代だから物事が全て非合理だということはない。現代と違うのは、人々が自分たちの無知を認識していることで、むしろ現代よりもその精神は健全かもしれない。

ちなみに憑依され、解脱した累(かさね)という女性が望んだ結果建立された石仏は、今も茨城の法蔵寺に現存する。

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