絶対音感

最相葉月の絶対音感

絶対音感というのは、僕のようにそれを持っていない人には神秘の能力だ。音楽家に絶対音感はどんな意味を持つのか?必須の能力なのか?生まれつきの能力なのか?

最相葉月は多くの著名な作曲者、演奏家、指揮者へのインタビューを施すことにより、この疑問に立ち向かう。導入部が「ドクトル・ジバゴ」で有名な作家パステルナークと作曲家スクリャービンの関わりから始めるあたりは、とてもうまい。最相葉月は、日本に絶対音感を有する人が多いことや絶対音感ゆえに音楽家が窮地に陥るケースがあることなど、様々なエピソード、事実を織りまぜて絶対音感という問題が、言語と似た関係性の地平にあることを明らかにしていく。そして当然のように、音の絶対性とは何か、というような認識論的な問いが持ち上がる。

最相は結局音楽とは何かという問題まで行き着くのだけど、その究極の問いにこの本が答えを出すことはなく、再びパステルナークに関する逸話で終わる。最後はちょっと息切れかなという感じだが、語りのうまさは中々のものだ。

でもこの本で僕が一番楽しんだのは、故レナード・バーンスタイン、五嶋みどり、小澤征爾など、随所に登場する著名な音楽家達のエピソード、味わいのあるコメントだ。

ちなみにこの本には出てこないが、レナード・バーンスタインはかつてビートルズについてこう語ったことがある。「ビートルズはベートーベン程偉大でないかもしれない。でもモーツアルトよりは偉大だろう。」

僕はクラッシック音楽のファンではないが、バーンスタインだけは特別な存在だ。しかし彼が絶対音感を持っていたかどうかなんて、どうでも良いことだ。

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