100均フリーダム

日常の写真

久しぶりに大笑いすると共に考えさせられた一冊。作者の内海慶一はかつて「ピクトさんの本」で、赤瀬川原平に匹敵するような路上観察術を編み出した人だ。あの時は路上標識だったが、今回はこともあろうに100均である。

100円均一商品の不正確な造形、意図不明のデザイン、何も考えてないような要素の組み合わせの意味を、彼独自の感性が読み解いていく。そのキーワードは「自由」。

100円均一のいい加減さを「自由」と牽強付会しているに過ぎないと言えないこともないが、とにかく選ばれたオブジェ、というか100均達の写真がすばらしい。商品の原価が分かるほど精細に、ある時は美しく、ある時は残酷に、良く考えられたアングルで撮っている。

そしてそれらの写真に添えられた解説が、まことに的確である。作者の100均への深い愛と嫌悪が混ざり合ったアンビバレントな感情が、良く伝わってくる。

内海慶一は間違いなく現代の幻視者の一人である。この本に幻惑されて、100均ショップに足を運ぶ人もあるかもしれないが、決して同じ魅惑的なオブジェに出会うことはできないだろう。

それらのオブジェはたぶん、ラフカディオ・ハーンが日本文化に見た幻影の遠い、遠いエコーなのだ。

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