とある集まりで二重らせんの話題が出ました。あのDNA構造を解明した功績でノーベル賞を受賞したワトソン、クリックと彼らが参考にしたロザリンド・フランクリンの DNAの写真のお話です。ロザリンド・フランクリンは、1950年代に自ら行ったDNAの撮影からワトソンらに先立ってその構造を直感していたが、その価値に気づいていなかったらしい。実際のイメージはX線回折データであり、どうやらこんなものらしいです。
このXの形から一気に二重らせんを想起するというのは、やはり天才の想像力だと感じます。ちなみにDNAの直接撮影はずっと時が下って2013年に京大が成功してます。
さて現在、我々が毎日どこかで目にするのがあのスパイクのついたウイルスの形です。
国立感染症研究所による実際の撮影画像はこちら。一般人にはこれからスパイクという形はなかなかイメージできないです。
研究者にとっては発見の手がかりだったり、一般人にとってはウイルスのシンボルだったり、イメージの力はとても強力ですが、最近の日本ではなんと言っても8割おじさんこと西浦教授が、最悪42万人の死という警告とともに発表したこの画像が日本人を恐怖に陥れました。
この図はSIRという100年前の理論とR0=2.5という初期理論値、そしてそれ以外の様々なパラメータを全く無視した単純なシミュレーションにしか過ぎないのですが、このイメージが日本人を圧倒的な恐怖に陥れました。現在、日本ではコロナによる感染は沈静化し管理可能なレベルに収まっています。新規感染者の数は世界的に見ても圧倒的に低い水準です。
都内の新規感染者数
既に日本より何倍、何十倍の死者を出し続けている多くの国でロックダウンの解除が進んでいます。ところが、日本では欧州の優等生であるドイツよりなんと100倍高い解除条件が設定されました。「総合的に判断する」という不可解な根拠と共にです。そして何より重要なことは日本人がその高いハードルをいわば「自発的に」承認しているということです。
イメージがもたらす恐怖は黙示録的な破壊力を持っていると思わざるを得ません。
イメージは人を操る恐怖のツールとして有効ですが、もちろんアートとしての価値も計り知れません。僕のお気に入りがニコンが主催している顕微鏡写真のコンペです。こちらは昨年度の第1位作品:
このコンペには動画部門もあるので、抗体がコロナウイルスを阻止するシーンなんか見たいのですが、残念ながらこのコンペは光学顕微鏡による写真に限っており、ルールとして電子顕微鏡による写真、動画は受け付けません。
ニコンには次回のコンペに限ってで構わないので、「コロナウイルス特設部門」を作って欲しいですね。
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