小沢昭一の「道楽三昧」 岩波新書
小沢昭一さんは現在80歳だそうだが、ほんとうにうらやましい人生を送っておられる。とにかく少年の時から、遊び一筋。ひたすらけれんみなく、自分の興味のためにだけ情熱を注いできた。この本は小沢昭一がその道楽人生の全てを、民俗学者に語るという趣向。
小沢昭一自身が大道芸を収集してきた民間の民俗学者とも言える存在なのだが、今回は専門の民俗学者である神崎宜武が聞き手である。つまり柳田國男に遠野物語を語った語り部、佐々木喜善の役どころだ。とはいえそこは小沢昭一、毎ページ面白い逸話で溢れている。
最初は虫取りの話から始まるのだが、その遊びのディテール、取った虫全てを覚えているかのような語りがすごい。佐々木喜善にも劣らない驚異的な記憶力だ。なによりすごいのは遊びに対する真剣さ。子供の世界の話だが、これは勝負とか賭博という表現がふさわしい。
僕が小沢昭一の名前を初めて知ったのは、僕が就職して直後である。最初の職場がなぜか西湘にあり、通勤は車で西湘バイパスの無料区間を使っていた。通勤帰りのころにラジオから流れていたのが「小沢昭一的こころ」という番組である。その軽妙洒脱な語りがなつかしい。
(残念ながら)西湘の職場を変わってからはその番組の存在をすっかり忘れてしまっていたのだが、この本を読んだ流れで調べてみたら、なんとまだ現役の番組であった。時間帯は変わったが1973年からずっと続いているらしい。
さらに最新の番組はここで聴けることが分かった。
インターネットで小沢昭一を聞くことこそ、粋と言うものだろう。
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