ん 

読書

山口謡司の「ん」 日本語最後の謎に挑む 新潮社

ひらがなの最後の「ん」。この本は「ん」成立に関するいくつもの謎について著した本である。「ん」の成立には、時期や発明者というような直接的な謎もあるが、「ん」が古代にはどう発音されていたかとか、そもそもなぜひらがなのシステムの一部としてそれが登場する必要があったのか、というような言語学的な謎がある。

その議論の中で面白かったのが、「上代特殊仮名遣い」の解釈である。古代では万葉仮名の22文字に甲類・乙類の2種類の書き分けがあったことが知られているが、山口謡司はこれが帰化人達の母国語である、当時の中国語の音の差異が反映したものであるという。つまり日本人が意識して発音や書き分けをおこなったものではなくて、中国人が別の言葉として聞き分けたということなのだ。

これはとても説得力のある解釈だ。僕が単に直感的に感じるだけだが、まず間違いないと思う。試しにWikipediaで「上代特殊仮名遣い」を調べてみたが、そのような解釈は出てこなかった。ただし、Googleでさらに検索すると、「藤井游惟」という人が、同じ解釈を前提とした「白村江敗戦と上代特殊仮名遣い」なる本を出していることが分かった。

この説の最初の提唱者はどちらかよく分からないが、藤井游惟の本も面白そうなのでそのうちに借りてみようと思う。いずれの創見によるものであれ、これは学問上の大発見だと思う。たぶん学会で認められない種類の、数多い真実のひとつなのだろう。

コメント

  1. 藤井游惟 より:

    藤井游惟です。
    拙著のご紹介、ありがとうございます。
    ただ、私の主張は『記紀万葉(日本書紀α群を除く)』を書いたのは中国人ではなく白村江敗戦で大量亡命してきた百済人(朝鮮語話者)である、ということであり、このことは拙著に添付してあるCDの「朝鮮語及び中国18カ所の方言音で読んだ万葉集」の発音を聞けば一目瞭然です。

    是非お読み頂き、ご高評賜りたいのですが、初版は発行部数が少なく、図書館に入っている場合は希で、アマゾンかなにかでお買い求め頂くしかありません。

    また、拙著は字面を読むだけでなく、付録CDに収録されている多数の音声学的実験を聞いて頂かなければ全く無意味なのですが、それには非常に手間暇がかかるため、それを省略して字面だけナナメ読みしてくだらない書評をする人間に悩まされております。(アマゾンの低い評価のレビューには、CDの内容に関する言及が全くないのがお分かりでしょう)

    拙論を理解して頂くのに一番手っ取り早い方法は、私の講演を聴いて頂くことです。
    近々、以下のような講演会があります。

    第42回 考古学を科学する会 

    日 時:2010年9月27日(月) 18時30分~20時30分ころ 
    会 場:大井町 きゅりあん 第1特別講習室  Tel 03-5479-4100
          http://www.shinagawa-culture.or.jp/curian/
    講演者:藤井游惟
    議 題:「『記紀万葉』を記述したのは白村江亡命百済人達だった」
           当日の緊急連絡先:中辻ケイタイ:090-9143-7894
    参加費:1000円

    どちらにお住まいかは分かりませんが、お近くでお時間がありましたら、是非お越しください。

  2. artjapan より:

    藤井様

    ご丁寧な紹介ありがとうございました。ご講演が私に理解できる内容であるか、はなはだ心もとないですが、興味がますます湧いてきました。

    都内に勤めておりますので、9月27日はぜひご講演を聞かせていただきたいと思います。

    当日はきゅりあんに行けばよろしいでしょうか。もし予約等、事前の手続きが必要な場合は、その旨お知らせいただけると幸いです。

    よろしくお願い致します。

  3. 藤井游惟 より:

    artjapan様

    私の講演は、身体・知能の欠陥のない日本人(日本語ネイティブスピーカー)であれば誰でも理解出来ますのでご安心ください。(^^)

    予約などは特に必要ありませんが、なにかお問い合わせがある場合は、↑の中辻さんという方にご連絡ください。

  4. artjapan より:

    藤井様

    了解しました。安心して参加させて頂きます。

    ご講演楽しみにしております。

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