モノ学の冒険

鎌田東二編集の「モノ学の冒険」 創元社

鎌田東二は自らを神道ソングライターと呼び、宗教学、神話研究においてアバンギャルドな活動を続けている人だ。僕はどうやら同じところに深く耽溺するタイプの学者より、鎌田東二や梅原猛のように常に何かを追い求めて動き続けるタイプの学者が好きらしい。

今回の鎌田東二の冒険は「もの」に対してだ。彼は今回の「モノ学」に関する共同研究で、日本における「もの」が単なる物質にとどまらず、「物」、「者」、「モノ」として多元的な性格を帯びている様を色々な切り口から明らかにしようとする。

共著者は心理学者、宗教学者、デザイナーと多彩でそれぞれに面白いテキストを寄せているのだが、今回の問題意識と関係なく面白かったのが、藤井秀雪という人のマネキンに関する考察だ。

日本のマネキンが1950年代の日本的な美人から国籍不明型の美人へ、リアルなデザインからアート志向に移り変わっていく歴史が興味深い。日本の現代のマネキンはヘッドレスに代表されるようなリアリティを欠くスタイルが主流だが、欧米ではリアルなマネキンが主流であること、マネキンのウエストは50cm程度だとかいうトリビアルな話も面白い。1955年に登場したFW-117型という弥勒菩薩を彷彿とさせるマネキンの写真など掲載されていて、雑学的な面白さで読んでしまった。

このような研究がいったいどのような成果に結びつくか(あるいは全く結びつかないか)分からないが、過去から受け継がれてきた物語や霊的な世界を無視したような現代の安易な「もの作り」に対する警鐘としての意味はあるだろう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました