身もフタもない日本文学史

清水義範の「身もフタもない日本文学史」 PHP新書

おなじみの清水義範、今回読んだのは清水版日本文学史である。僕は正統的な美術史とか文学史にはあまり興味がない。読み物として退屈だからだ。

美術史なら「ひらがな日本美術史」の橋本治に限る。この本は大判かつ全7巻なので図書館に行く度に読んでいるのだが、1年かけてまだ第6巻の途中である。図版が美しくて橋本の解説が楽しいので、中々進まないのだ。

清水義範の日本文学史は、そんな既存の秩序に挑戦するような野心的な大作ではない。正反対に新書ですぐに読めてしまう。でも普通の人の皮膚感覚で日本文学の流れがすっきりまとめられていて分かりやすい。

一応、源氏物語からの通史となっているが、源氏物語と並ぶ別格として清水が挙げているのが、漱石である。漱石が別格であることは、本当にそうだと思う。とにかく何度読んでも面白い。これまでたくさんの本を読んできたが、僕が何度も読みたいと思ったのは正直言って、漱石だけである。

丸谷才一が漱石は「坊ちゃん」を書くにあたり、フィールディングの「トム・ジョーンズ」を参考したという説を唱えたが、この本にはそのようなこともちゃんと書いてある。ところでそれを原作とした「トム・ジョーンズの華麗な冒険」は、1960年代のイギリス映画だが、抜群に面白かった。この映画はその面白さで当時のハリウッドに衝撃を与えたのだが、同じようにブロードウエイに衝撃を与えたのが、1980年代のイギリスミュージカル「オペラ座の怪人」だった。などとうんちく話になってきたので、今日はこの辺でおしまい。

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