レイ・ブラッドベリの「さよなら僕の夏」 晶文社
レイ・ブラッドベリの作品は、「火星年代記」、「華氏451度」を始めとしてたくさん読んできた。この小説は「たんぽぽのお酒」の続編としてブラッドベリが50年温めてきた物語を、80代になって書き下ろしたものだそうだ。
久しぶりに手にとったブラッドベリなのだが、子供から大人へ成長を遂げようとする14歳の主人公に素直に感情移入ができない自分を発見した。こんなことは初めてのことだ。何かが変わってしまった。変わったのは僕なのか、ブラッドベリではないのか?
そりゃ、あんただよ。と言われそうだが、全ての作品が名作である芸術家はいない。気になるのは、ブラッドベリがこの作品を50年もの間温めてきたという事実だ。知らず知らずの間に、ブラッドベリはファンタジーの核心である驚きや恐れと和解してしまったのではないか?
一番好きな「火星年代記」をもう一度読んでみようと思う。もしファンタジーが、魔法が蘇らなければ、変わったのは僕だと納得できる。
山下達郎の作品に「さよなら夏の日」という名曲がある。若者が誰もが経験する夏、二度と帰らぬ夏を歌ったものだ。社会の区切りとしての卒業は3月だが、子どもが若者になるのも、若者が大人になるのも、夏にさよならをする時なのだ。
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