人工庭園

いつも日曜に行く図書館は、カバーを表にした形で本がディスプレイしてあるので、装丁が良いとつい手にとってしまいます。アメリカの50年代のSF的ポスターをイメージした表紙の横尾忠則の「人工庭園」を借りてしまったのは、いわば避け難い事態だったといえます。

「人工庭園」は、横尾が2002年から105回に亘り彼が東京新聞に連載したコラムです。彼の製作にまつわる話が多いことと、なぜかは知らないけど僕と感じ方が共通する話題が多いので、楽しく読みました。

彼は三島由紀夫と懇意にしていたらしく、三島の逸話が時々出てきます。三島が横尾を一度も嘘をついたことのない人物だといつも他人に紹介していたことを、全くの勘違いだと言っているのですが、横尾のコラムは、アーティスト特有のレトリックや誇張を排除したまことにあっけらかんとしたもので、三島がそう思った理由が分ります。

全てのコラムは横尾の手による作品の画像がついており、大判のブログという感覚で読めました。大体のアーティストは視覚記憶が非常に発達しているものなのですが、自分の展覧会に来てくれた女優の石田えりを2度も認識できずに、気まずい思いをしたことなど、アーティストらしからぬところが横尾忠則という人の真骨頂でしょうか。

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