レヴィ=ストロース博士の死去

「ひとつの文明は、他のひとつあるいはいくつかの文明を比較対象とすることなしには、自らをかえりみることもできない、という認識があったのです。自らの文明を知り、理解するにはそれを他者の視点から見る術を身につけなければならない。それは世阿弥が語っている、自らの芸を判ずるには、自分が観客であるかのようにして、演ずる自分を見なければならないという能役者のやりかたにも似ています。」

レヴィ=ストロース博士が10月30日に亡くなっていたことが親族から明らかにされた。100歳であった。前記は彼が1986年に日本で講演を行ったときの言葉だが、その講演の中で世阿弥以外にも、光琳、光悦、本居宣長他、多くの日本の文化人について参照しており、日本文化への卓越した関心と理解を示している。さらに博士は一時、真剣に日本語を学ぼうとしたが、スタートが遅すぎたため断念したことを明らかにしている。

世界も日本も、そして僕のようなちっぽけな存在もレヴィ=ストロース博士に多くを学んだ。博士は構造主義を提唱してその後の世界の在り方に大きな影響を与えた、疑いなく20世紀で最も偉大な文化人であった。その博士が日本文化に示した関心を考えるとき、日本人はもっともっと自国の文化に敬意を払わなければならないと改めて思う。

合掌

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