サン・フォリアン寺院の首吊人

アート

先日原尞の本を読んで本格的な探偵小説を読みたくなり、2冊借りてきた。レイモンド・チャンドラーの「The Long Goodbye」とジョルジュ・シムノンの「サン・フォリアン寺院の首吊人」である。あまりにも有名なチャンドラーの「The Long Goodbye」を村上春樹の訳で読み直すのも一興と思ったのだが、改めて手に取ると700ページを超える長編だった。そんな大作だった記憶がないのだが、他にも読みたい本が色々あるので、とりあえずシムノンの方を読むことにした。

「サン・フォリアン寺院の首吊人」はシムノンのメグレ探偵シリーズの一編だ。メグレ・シリーズは実は読んだことがなかったが、社会の暗黒面をえぐり出す、思ったよりもしぶい小説だった。日本で言えば松本清張が近いかもしれない。原尞によれば、メグレはジャン・ギャバン(古い!)のイメージなのだそうだ。メグレはヒロイズムもやせがまんも持ち合わせない現実主義者なので、ハードボイルドのジャンルには入らないだろう。僕はもう少し娯楽的な展開のある探偵小説の方が好みだが、黄色く変色した本で読むメグレには不思議な味わいがあった。

素材の年輪といえば、有元利夫展が今、目黒の庭園美術館で行われている。有元利夫はフレスコ画や仏画などの「古さ」にこだわった人で、僕のお気に入りの作家の一人だ。最近疲れ気味なので、有元利夫の絶対的な過去の空間に身を浸してみるのが心地良さそうな気がする。時間を作って行ってみようと思う。

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