旅と芸術

日常の写真

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美術館ってとても楽しい遊び場ですが、楽しむためには自分にあった展覧会を選ぶことが重要です。埼玉県立近代美術館で開催中の「旅と芸術」展は、まさに僕のためにあるような展覧会でした。エデンの園と欧州等の地域が並んで描かれた「ヘレフォード世界図」から始まり、中世の景観が描かれた「年代記」、誰も見たことのない幻想の動物が描かれた「東方宇宙誌」など、一気に中世の夢幻世界に引きこまれます。

ヨーロッパの人々に圧倒的なオリエンタリズムの波を引き起こしたのが、ナポレオンのエジプト遠征団が記録した「エジプト誌」でした。ピラミッドやスフィンクスを描いた数多くのエッチングが、かつてヨーロッパを魅了したように、21世紀の僕をはるかな未知の旅に誘います。

展覧会では風景図や観光写真に残された芸術家、写真家の様々な眼差しを通して旅の本質に迫ります。自宅を出ることがほとんどなかったボードレールの旅に関する詩なんかもありました。「世紀末のエグゾティズム」のセクションではルドン、ビアズリー、ゴーギャン、モローなど多くの絵画に加え、ヴェルヌの「80日間世界一周」が展示されていました。

「空想の旅 超現実の旅」のセクションには、画家としても有名だったユゴーの幻想的な城の絵がありました。裸の女性と共にお約束のように汽車を描いたデルヴォーの絵も3点ほどありました。パリの下町のなんでもない風景を博物学者のように個人的に記録したアジェの写真が、このセクションにあったことがとても興味深い。

「旅行者の見た風景 列島の自然」セクションではポンディングやベアトの「富士山」の写真集、ビゴーによる磐梯山爆発や三陸大津波のスケッチがありました。最後に僕が文庫本で読んで感銘を受けたイザベラ・バードの「日本奥地紀行」の原本があったのですが、それがなぜか「旅」の終わりを感じさせました。北浦和にある美術館ということもあり、あまり人が入っていませんでしたが、旅や博物的な趣味のある人には文句なく楽しく、おすすめできる展覧会です(1月末まで)。

尚、常設展の一部に辰野登恵子の作品が展示されてます。ほんの数年前会田誠との対談付きの作品展を観に行ったのですが、昨年亡くなっていたことを今回学芸員の方の説明で知りました。作品を前にしてあらためて偉大な作家であったと感じ入りました。

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翌日に新宿御苑を歩いたのですが、気のせいかその時撮った写真には熱帯の旅へのあこがれが見え隠れしている気がします。

コメント

  1. 山の会の元メンバー より:

    たまに見させていただいています.
    寒い時は家族で博物館によく行きます.
    先週は茨城県自然博物館に行きました.
    職場関係の茨城県つくば市の地質標本館は3月まで集客キャンペーン中です.
    入場は無料です.ぜひお越しください.
    (会員の皆さまにも伝えていただければ幸いです.)
    https://www.gsj.jp/Muse/
    少し前に行った千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館も立派です.
    すごいです.オススメです.
    ではまた.

  2. artjapan より:

    コメントありがとうございます。会員にはMLで伝えました。
    歴博は確かに大きな施設で私の興味の分野なのですが、アクセスが悪いので1度しか行ったことがありません。地質標本館は行ったことありませんが、HPでみるところかなり立派な施設ですね。近くに行く機会があればぜひ寄ってみたいです。

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