「おじさん」的思考

内田樹の『「おじさん」的思考」(晶文社)

内田樹のコラム、エッセイを集めたものですが、内田の文章はどれを読んでも切れ味が鋭くて面白い。教育論から社会問題まで相変わらず快刀乱麻の切り口ですが、面白かったのは、ロールモデル=人生の師についての議論です。小津安二郎の映画では、父と行き遅れた娘の生活が描かれるのが典型的なパターンなのですが、内田はその小津映画に出てくる「父」が、自分のロールモデルだと言う。そして、それを追体験するように内田は娘と暮らしているらしい。結局、自分は自分のなりたい自分になってしまうものだということかもしれないが、僕はそのような形で自分のロールモデルを意識したことはないです。最も内田の学問上の師は、レヴィナスで、この本でも彼に関する言及がありますが、何度読んでもレヴィナスについての記述は難解で分らない。同じく難解だといわれるラカンに関する記述は、はるかに分りやすいのですが。

そういえば先週、「眼の隠喩 視線の現象学」という本を書店で見つけて、あまりに面白そうだったので、つい買ってしまいました。でも移動の合間を見つけて読むことを繰り返しているうちに、どこかに置き忘れてしまいました。買いなおすのもくやしいので、そのうちに図書館で借りることにします。

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