うらわ美術館で開催中の、「誌上のユートピア」展に行ってきました。この展覧会は、19世紀末の欧州美術に影響を受け明治から大正にかけ花開いた日本の美術運動および雑誌にスポットを当てたものです。
日曜のお昼頃でしたが、例によって館員の方が多いほどがらがらで、ゆっくりと見ることが出来ました。
内容も、世紀末の欧州の美術雑誌の内容がとても充実していて面白かったです。特にビアズリーが創刊した「イエローブック」やサロメの挿絵、「パン」や「ユーゲント」などの欧州の美術雑誌が数多く展示されており、企画の前段の欧州美術だけでも、十分見る価値があります。
青木繁、黒田清輝や藤島武二など当時の一流の画家が表紙や口絵を飾った、日本の美術雑誌の展示も興味深かったですが、星製薬(星新一のお父さんが創業した製薬会社)と三越の新館開業用に書かれた杉浦非水のポスターなんかも面白かったです。
このうらわ美術館は市立らしいのですが、「本に関わるアート」という僕の好きなコンセプトを持っており、小さいながらも良い美術館だと思います。市内にある埼玉県立近代美術館より、企画は数段洗練されていると感じます。県立といえば、家の近くに県立の「芸術劇場」という名前を冠した施設があるのですが、なぜかシェークスピア物に特化しており、それ以外の企画があまりに貧しくて最近はほとんど行っていません。
最近読んでいるのが、漱石にラファエル前派の影響を見ている江藤淳の「漱石論集」なのですが、この展覧会でもトマス・マロリーによる「アーサー王の死」のビアズリーによる印象的な挿絵がありました。
ということで、僕には企画、展示物共に満足できる展覧会でした。一般的にはちょっとマニアックかもしれないけど。
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