「反原発」の不都合な真実

奇しくも3月11日の昨日、この本を読み終えた。徹底的に冷静かつ知的な思考を丹念に積み重ねた、評判通りの素晴らしい本である。藤原数希という人はとんでもない頭脳を持っているので、Twitterなどでは直接的で尖ったメッセージを発信していることも多い。しかしこの本ではあくまでたんたんと事実を提示し、着実に論理を展開していく。

著者が次々と提示していく事実にまず圧倒される。様々な領域に渡って精緻に調べているので、おそらく事実関係で疑問を起こさせるようなページはひとつもないと言って良い。その上で、少しもゆるみのない切れ味の良い論理が展開される。こんなことを言っては不謹慎かもしれないが、ここまで論理が洗練されるとある種の快感さえ感じてしまう。

周到な論理展開の最後に、圧倒的な比喩による総括が待っている。911以降の米国のテロとの戦いと日本の置かれた状況が、驚くような周到な論理で対置されるのだが、ここだけは読んでみないと分からないと思う。

そのように書くと、この本が技巧的なレトリックによるものではないかと思われるかも知れないが、実は全くその反対で、事実の重みがこの本を支えている。だからこの本は原発に対する主義、スタンス、感情に依らず、多くの人に読んで欲しいと思う。反原発の人でも、結論に同意するかは別として、きっとハッとする事実に出会えると思う。

唯一残念なのが、題名である。このような挑戦的なタイトルでは、どんなに冷静な議論を積み重ねていても、(全く関係ないのに)原発利害関係者というレッテルを貼られてしまうだろう。

とにかく反原発の人もそうでない人も、だまされたと思ってぜひ読んでみてください。