明日の広告

読書

最近見たマーケティング関係の講演で薦められていたのがこの本。新書だが、関係者の間ではかなり有名な本らしい。著者によればもはや単なる受身の消費者というのは過去のモデルである。著者が描き出すのは、プロが作る広告より口コミを信頼し、疑い深く、購買に当たっては注意深くネット検索で製品を丸裸にする、手ごわい消費者である。

そのような消費者に相対するには、消費者との相互的な関係をデザインするという視点が必要だ。そのためにまずは敵を知るべきだとして著者が例えるのがラブレター。つまり明日の広告で語られるのは、進化した消費者にラブレターを渡す技術であり、それは過去に用いられたようなマスメディアからの一方的な発信ではなく、消費者の行動を把握することにより、その動線上のいくつかの最適かつ複数のメディアで待ち伏せる戦略的な技術である。

この実践的な広告技法(というよりコミュニケーション・デザイン)の解説も面白いが、なにより面白いのはこの業界の風雲児として活躍してきた著者の数々のエピソードだ。特に井上雅彦の傑作バスケットボール漫画である「スラムダンク」1億冊発行に際して、井上雅彦が読者への感謝として企画したキャンペーンの話は圧巻で、この漫画をまったく読んだことのない僕が深く感動した。このエピソードを読むだけでもこの本を買う価値があるだろう。

実は講演ではこの著者の次の著作「明日のコミュニケーション」が、近日中に出るという話がされていた。借りた第1作が評判どおり面白かったので、第2作は買って読もうと思っている。

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