放射能は怖いのウソ

読書

親子で考える放射能Q&Aと副題されていることからも、この本の主なターゲットは子供を持つ母親達だと考えて間違いない。QA形式で書かれており、福島の原発事故による放射能の影響を分かりやすく解説している。

僕も福島の事故に関して様々な人たちと意見交換を行ってきたが、最大の論点が現在日本政府が基準として採用しているICRPの勧告であることは間違いない。しかし、ICRPの決定が間違っていたことは、もはや専門家の常識である。ごく一部の専門家と扇動家的な人たちが今も強硬にICRPの決定を支持しており、それをマスコミが増幅するという悪循環が、現在の放射能に対するヒステリックな空気を形成した。

この本はその最後の論点にいく前に、様々な局面で検証された事実を丹念に積み上げていく。それらはもちろん広島、長崎、チェルノブイリを含むが、世の中にはそれに止まらない膨大なデータが存在する。驚くべきことに、それらのデータは放射能が思われているような悪魔的な何かではなく、それどころか人間の生命活動の重要な要素であることを明らかにしている。もちろん原爆のような桁違いの放射能は致命的に危険である。だが福島の放射能のレベルの環境では、それとは全く違う生命における基本的なロジックが働いているのである。

このように要約すると、ある種の「とんでも本」のように感じられるかもしれない、怪しいと思うのが普通だと思う。だが、この本に書かれていることは全て科学的に検証された事実である。一方、ICRPの勧告は、80年ほどまえのショウジョウバエの実験結果から人への影響を類推したというただの仮説に過ぎず、それを例証する実験結果は今だに全くない。ショウジョウバエという生物が実は遺伝子的に非常に特異な種であり、偶然実験にショウジョウバエを選択したことが人類史上、運命的に不幸な出来事だったのである。

この本は、放射能に関する重要な論点を最小限の数値と理屈で(しかも変に扇情的にならずに)説明していることは見事である。

僕が最近友人たちと話して思ったことは、放射能の問題は単に知的能力が高ければ、正確に理解できるというものでもないということだ。放射能の影響を喧伝する人たちが巧妙に人々の恐怖心を利用し、強力な予断(このような場合、僕は神話とは呼ばない)を作り出しているからだ。

僕はこの自分自身のために書かれた趣味的な読書ブログであまり本を人に勧めることはない。しかしこの本だけは全ての人に読んでほしいと思っている。

コメント

  1. ロック より:

    こんにちは。素敵な感想をありがとうございます。編集担当のものです。こちらは服部先生の講演会の動画です。いろんな方が宣伝してくれて1万5000人が視聴してくれています。よかったらご覧ください。http://www.ustream.tv/recorded/17862990

タイトルとURLをコピーしました