もうひとつの1Q84

今日は自宅待機の予定が出社となったが、結局早めに退社した。村上春樹の1Q84 Book2を読みかけていたのだが、帰宅途中で立ち寄った図書館で最後まで読んでそのまま返却した。

1Q84は互いに惹かれつつ出会うことのない二人が、月が二つある不思議な世界にいつのまにか引きこまれてしまうという物語だ。

この数日、1Q84を読む傍ら、大地震から津波、原発と続くTVの映像を見続けていた。そしたら次第に自分が1Q84のように、不思議の世界に入ったような感覚に囚われてきた。そこは自分が過去に住んでいた世界にそっくりだが、別のロジックが働いている。月はひとつしかないが、地面が揺れ動き、大きな波が多くの人をさらっていく。

1Q84で印象的なことは、全ての登場人物が自分の役割を知っているということだ。そして誰もが印象的な言葉をつぶやく、例えそれが、主人公がたまたま乗り合わせるタクシーの運転手だとしても。

しかし、我々が引きこまれてしまったこの新しい世界では、人々は役割を知らないようだ。いや、そうではない。現場では全ての人が、新しい世界の理不尽に対抗しようとして今も必死で自らのミッションを果たそうとしている。この国のリーダー達だけが、過去に取り残されたままなのだ。

閲覧室には、「下町の歩き方」や「健康法」や「お宝株」の雑誌が並んでいた。数日前にはあたりまえだった平和な世界がそこにあった。だが、明らかなことは我々は既に新しい世界に引きこまれ、もはや過去にもどることは出来ないということだ。

菅首相を初めとする我が国のリーダー達に、その自覚があるのかどうかは定かではない。少なくとも、世の中を動かすことのできる「言葉」を持ってはいないのは確かだ。

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