内田樹の「日本辺境論」 (新潮新書)
急用で帰省した際に羽田空港の書店で買った本がこれ。
この本は日本人論について書かれた本だ。日本人について書かれた本ではなくて、日本人論について書かれた本である。、例によって軽快で分かりやすい言い回しだが、中華の辺境で生き抜いてきた民族の知恵と限界、日本人のパラダイムというような境界線が見事に著されている。
思うに僕は、メタ◯◯◯論が好きなのだ。メタとは概念的な上位を表すのだが、この本はすぐれたメタ日本人論になっている。右翼も左翼も革新も保守も、その根底に超えられない共通の思考の前提があることが議論されているのだが、そのような操作は当たり前だが圧倒的に「メタ」な知識がないと行うことができない。
内田樹の場合は、西洋思想史、哲学のバックグラウンドを背景に、徹底して問題の立て方を思考しているのだが、その緻密さはあくまで軽快な文章スタイルの影に隠してある。僕から見ればメタ・メタ・メタ・・なレベルの思考を行っているはずなのだが、それを読者に明示的に意識させないのが、ある種職人的なうまさということになるだろうか。
最後には養老孟司の知見によるマンガ論にまで到達する。日本人がマンガを読むときに表意文記号と表音記号の読解を並列処理しているらしいという養老孟司の議論を敷衍しているのだが、その先の展開が内田らしく独創的で刺激的な知見に満ちている。
空港の書店で迷ったら、内田樹をお薦めしたい。
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