浮かぶ飛行島

前の週末に図書館に行きそびれたので、今週前半は読むべき本がありませんでした。

でもこういうときには、無料のオンライン文庫、「青空文庫」があるのです。今回は海野十三の「浮かぶ飛行島」を半分携帯で、半分PCで読みました。

「浮かぶ飛行島」は、1938年に少年倶楽部に連載された冒険小説で、僕の好きな押川春浪の流れを汲む作品です。盧溝橋事件の1年後に書かれたものだけに、英国やロシアへの強い反感とアジア各国への優越感が全体を支配しており。押川春浪の時代の素朴な冒険譚に比べ、ちょっと戦意高揚的な色彩が濃くなっています。

浮かぶ飛行島というモチーフは、「動く人工島」のジュール・ベルヌを思い起こさせます。この小説では英国が南シナ海に超巨大な人工島を建設するのですが、それが実は日本を壊滅させるために構築された動く基地だった・・・というようなちょっとありえない系の設定です。

そして英国がロシアを抱き込んで日本を殲滅する作戦を未然に阻止するために、日本帝国海軍が人工島に密かに送り込んだスパイが、日本帝国海軍きっての快男児、川上大尉であった!

とまあ、突っ込みどころをさがせばきりがない、たわいもないストーリーなのですが、僕に言わせれば007だって似たようなものです。主人公の窮地を必ず敵の女性スパイが助けるというお約束がない分、007よりリアリティがあると言えるかも知れません。

とにかく僕にとっては、十分楽しめる作品でした。日本人がある時まで溢れるほどに持っていた誇り、希望、夢、そして使命感。いまでは失われたファンタジーのようなものですが、その時代には多くの日本人の中に確かに存在していたのです。

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