リアルのゆくえ

「リアルのゆくえ」 講談社現代新書

このブログでも再三取り上げてきたおたく評論家・作家の大塚英志と現代思想と情報社会論を専門とする評論家東浩紀の対談集である。2001年、2002年の対談と2007年、2008年の対談で構成されており、その間二人の間に溝があったようだが、詳しいことは語られない。

共にサブカルチャーを主な考察の対象としているのだが、とにかく思想的背景というか性格といった方が良いかもしれないが、それが対照的なふたりである。東の方は典型的なポストモダニストであり、大きな物語が失われた世界に分散的な制度設計の可能性を見ようとしている冷静で覚めた感覚を持っている。一方、大塚は評論家の責任とか社会への関与ということばで東を攻撃する徹底したイデオロギー信者である。

これってレヴィ=ストロースとサルトルの対決からほとんど変わらない対決の構図なのだけど、ふたりの戦わせる言葉からは自然と現代社会の様相が漏れ出てくる。ふたりの論争から浮かび上がる社会的に疎外されたおたく(大塚に言わせるとオタクではなくおたくが正しい)やネット右翼化するニートの分析が興味深い。

結局、東は相対主義的と言われようが何と言われようがポストモダンの枠内に留まり続けるが、あくまで政治的なコミットメントを求め続ける大塚への共感を最後に口にする。しかし二人共、現代の状況がそのような思想的側面でのみ語られるべきものでないことは先刻承知なはずである。端的に言えば、現代は老人が若者を搾取している世代間格差の時代であり、それは経済学的な処方箋がなくては解決しない。

実は僕の興味はそのような経済的な政治設計の方に移っているのだが、民俗学と現代思想を出自とするこのふたりの同語反復的な論争だけは今でも面白く感じてしまう。それは多分大塚の評論にそもそも強い作家性があるからだと思うし、それこそは東が最後に共感を口にしてしまう何かなのだろう。

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