建築探偵の謎

少し前に読んだ「路上観察学入門」で、建築学者の藤森照信の文章があまりに面白かったので、彼の専門分野の本、その名も「建築探偵の謎」を読んでみました。と言っても学術的な専門書ではなく、もちろん路上観察の延長線上の「建築」です。

僕は図や写真が多い博物誌的な本がすきなのですが、この本はその中でもかなりお気楽な部類に入ります。

藤森の方法論はつまるところ徹底した現場主義。つまりカメラを片手に日本の都市を歩き回り、彼のアンテナに掛かった建築を路上観察していくのです。彼の関心は主に素材と様式にあり、とかく作っては壊してしまう日本の刹那的な都市計画のはざまで奇跡のように生き残った建築物を見つけ出しては、彼独自の分析を施していきます。

日本には、世界最古の木造建築である法隆寺をはじめとする多くの歴史的木造建築があるのだけど、なまじそれらがあまりに古いため、近代の建築の保存がおろそかになった点もありますね。高々数百年の歴史しかない米国では、近代の歴史的建築物が大切にされているのと対照的です。

おそらく建築史的に見れば藤森が見つけ出してくるそれらの建築物の背後には、とんでもなく長い物語、様式の変遷があるのでしょう。でもこの本の良いところは、それらの建築物の最も(路上観察的に)面白い部分を、いくつかの写真を添えてさらりと解説しているところです。

まだまだ専門的な知識も雑学的知識も足りないけど、僕もいつかは僕の見出した歴史を語りたいと思います。例えば前回少し触れたロボットの形態史なんて面白いかな。

いつの日かそのような本を書くと言うのが、僕のささやかな夢であります。

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