日本神話とアンパンマン

久しぶりにとてもユニークな本と出合いました。日本神話とアンパンマンにいったいなんの関係が?と疑問に感じられるかもしれません。でも山田永はひとつひとつ具体的に、アンパンマンと日本神話との共通項を例証していきます。

最初になるほど!と思ったのが、日本神話とアンパンマンの地理的な構造の共通性です。日本神話では、神々は高天原、人間は葦原中国に住んでおり、異界として黄泉の国があります。山田はアンパンマンワールドも全く同じ構造があるといいます。アンパンマンのいるのがパン工場、アンパンマンの保護の対象として存在するのが街、そしてバイキンマンがいるのがバイキン島。さらにディテールとして分析されるのが、葦原中国と黄泉の国の位置関係です。山田は、黄泉の国は葦原中国よりわずかに高いところにあるよう、記紀で記述されていることに着目します。これに対しアンパンマンではどうかというと、そう、「アンパーンチ」の威力で「バイバイキーン」と飛ばされる方向は、水平線よりやや上向きではないか!

とまあ、これだけではこじつけともいえなくないのですが、日本神話の神々とアンパンマンの登場人物の共通性の分析がまた鋭い。もちろんアンパンマンはアマテラスです。それではバイキンマンは誰か。これは古代史ファンならすぐに分るでしょうが、スサノオに対応します。スサノオと共にアンパンマン・ワールドのトリックスターとして位置づけられているのが、ホラーマンです。やや脱線ぎみながらゲゲゲの鬼太郎のねずみ男との比較論がまた面白い。そして人気のドキンちゃんは敗者としてバイキンマンとヒメ・ヒコのユニットを形成することになります。

アンパンマンで魅力的なのは、どこからともなく現れては事件が解決すると、風とともに去っていく、おむすびまんや、やきそばまん等の旅人たちです。山田永はかれらを折口信夫が研究したマレビト、つまり漂白の神々として位置づけます。

ということで、アンパンマンは日本神話と共通の神話的世界を形成しているという山田の語りに、僕はすっかり洗脳されてしまいました。

この本は、アンパンマンのファンはもちろん、日本神話ファンにぜひ読んで欲しいです。おもわずにっこりすること請け合いです。

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