ボルヘス 文学を語る

この本はボルヘスを探して見つけたわけではなく、図書館をうろついていて偶然見つけたもの。ボルヘスは世界を全て記述する図書館の短編を書いているが、自身が図書館に例えられるような恐るべき記憶力の持ち主だった。僕は現実の図書館のなかで伝説の図書館に呼び止められたのだ。

この本はボルヘスが1939年にハーバード大学で6回の講演を行った記録である。ボルヘスは50年代に視力を失ってしまうのだが、この講義の時も既にほとんど目が見えなかったらしい。

詩、暗喩、物語をボルヘスは静かに語るのだが、随所に古今の作家の引用を行う。つまりボルヘスは引用する全ての作品を記憶し、その一部を呼び出していたのだ。

ボルヘスの物語は簡潔だが、その物語世界は何重にも重なった暗喩の中にある。そして彼自身がその暗喩を構成している。

考える限り、記憶力を含めて、ボルヘスと僕には何の共通点もない。だけどこの本を読んでいて一つだけ共通点を見つけた。ボルヘスが最初に記憶している本が「ドン・キホーテ」だったと書いているのだ。なぜか、僕も子供全集の中の「ドン・キホーテ」が最初のお気に入りだった。馬にまたがった痩せた騎士姿の挿絵もちゃんと覚えている。僕の中のちょっぴり夢想的な部分は、その時に生まれたのだと思う。

ところで今年こそは幸四郎の「ラ・マンチャの男」を見に行こうと思っている。夏は山の予定でいっぱいだが、8月のどこかの週末だけは帝国劇場に出現するつもりだ。

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