読み替えられた日本神話

今日は「倉岳山」に登るはずだったのに、雨で中止となり、読書の日となりました。

「読み替えられた日本神話」 斎藤英喜 (講談社現代新書)

この本は日本神話が、今に残る日本書紀と古事記の形でずっと読み継がれてきたわけでは決してなく、歴史の中で様々な変容を遂げてきたことを明らかにしてくれるものです。

明治国家における国家神道確立の中でアマテラスとの神学的論争の果てに抹殺されていくスサノオを追った思想史については、例えば原武史の「出雲という思想」という著作があります。そこで語られるのは、国家神道に至るアマテラスとの神学上の戦いに敗れ、闇の存在として零落していくスサノオ、オオクニヌシの物語です。この観点からの著作って結構たくさんあるのですが、「読み替えられた日本神話」はむしろスサノオに比べその正統性から考察の対象となりにくいアマテラスの神話的変形について目配りしており、それがとても興味深い。

全体としては、日本神話の変容の歴史を、歴史学、民俗学、神話学的知見を駆使してから解きなおしたもので、ラフカディオ・ハーン、宮崎駿、吉本隆明、中沢新一等の作品解釈などが散りばめられており、中々読み応えがありました。

つまるところ現代思想を総動員して日本神話の「読み替え」、つまりテキストの自由な変容を分析したものですから、レヴィ=ストロースの名前が登場するのは当たり前としても、ここにロラン・バルトが登場しないのは、しっくりこなかったですね。ちょっと不思議です。

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