オールズバーグの魔法のほうき

オールズバーグの急行「北極号」 は、イマジネーションと色彩の傑作だった。こちらの絵本はひょんなことから魔女が未亡人の家にほうきを残していったことから起こるのどかな物語。モノクロームの絵がすばらしい。今回も訳は村上春樹。この作家は彼のお気に入りらしい。

この物語は未亡人と献身的な召使というひとつのジャンルに属する。例えば米映画の「ドライビング・ミス・デイジー」では未亡人と運転手の物語となり、「無法松の一生」では運転手ではなく、人力車夫の松五郎、通称「松」となる。

過去の世界に生きる未亡人と同じく過去の世界に属しつつも未亡人に寄り添い、現実の問題を解決しようと努力する召使という構図は通常シニカルな物語として成立する。しかしもちろんこれは絵本。全ての問題は、絵本の中の時が解決する。絵本においては時は止まったまま動かない。絵本の世界ではどんな現実の問題も、永遠に繰り返す日常に敗北するのだ。

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