越境者的ニッポン

読書

どうやら森巣博という人は海外のカジノを渡り歩く生粋のバクチ打ちで、典型的なアウトサイダーらしい。ほとんど海外で博打を打ちながら暮らし、世界の無宿人となりはてた立場で日本を批判的に論じたものだ。

日本の権力構造を支えるマスコミの奇妙な語法、警察権力の危うさ、教育といえるレベルにない学校システム、日本人が自覚できない差別的言語空間など、日本人が恥ずべき事柄を次々と繰り出してくる。眉をひそめて、ただのバクチ打ちの話だと笑い飛ばせれば良いのだが、「そうだね」とほとんど納得してしまうことに自分で驚いた。この著者が自らが語る修羅の経験とは別に、かなりの学問的教養を身につけていることは明白だ。

だが最も重要なことは、おそらくバブルの崩壊から国の財政破綻、民主党政権の欺瞞を見て、皆が日本という国の成り立ちが根本からがおかしいことに気づいてしまったということだ。少し前なら眉をひそめて笑っていられたような危うい言説が、今は少しも危うくない。この著者の言い分は、健全な精神から生じているととさえ感じてしまう。

これは深刻な危機である。

この著者も言うように、リスクがないシステムほどリスクの大きいものはない。リスクがない幻想の社会に生きてきた日本人が、ついに我に帰ったのかもしれないが、いささか遅すぎる覚醒だっただろう。

もはやこの著者が日本人に警告する時は過ぎたと思う。彼は文筆家から速やかに賭博の道に帰ったほうが良い。何かが壊れるときは、理論でもシステムでもなく、賭博者の勘がものをいう。国にとっては由々しき事態だが、今こそ賭博人、森巣博の出番ではないか。

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