アーティスト・トーク

日常の写真

 

今日は銀座のBLDギャラリーに辰野登恵子と会田誠のアーティスト・トークを見にいってきた。

ここはヤノベケンジ展など、僕の好みの展覧会をやってくれるので、銀座に行く時は良く覗いている。今回は、辰野登恵子の展覧会に合わせた会田誠とのアーティスト・トーク開催のメールが来たので足を運んだ。実は辰野登恵子という人はよく知らなかったのだが、会田誠はご存知、村上隆なんかと同時代の現代アーティストのスターのひとりで、この人が何を語るかに興味があった。

会田誠登場の割には聴衆は意外に人は少く、せいぜい50人といったところ。最前列でふたりのトークを楽しんだ。ふたりが辰野登恵子の展覧会場の中で辰野の絵を見ながら絵画を語るという趣向である。

ちなみに辰野登恵子の絵はモノ派やミニマリスムに影響を受けた抽象絵画という評価らしい。出自はともかく、その絵はとても明るい色彩と明快な空間感覚が充満しており、なんか部屋に飾りたくなる種類の絵だ。

一方の会田は村上隆のような(別に悪い意味ではなく)商業的アート路線とも違う、社会に対する確信的な批評性が売りの作家だ。しかし芸大の大先輩を批評するというのは、さすがの会田にも難しかっただろう。しかも作風は正反対とも言えるふたりである。

ということで辰野の絵を語る会田の語りは批評というより、自然に学生時代の芸大の雰囲気とか大学での非常任講師の体験談とか、そういう話に流れていった。学生時代からの方向性として、辰野が芸大の正統的な流れとしてのモノ派やセザンヌを語るのに対し、会田は芸大の教授であった榎倉康二の語る「空間」という言葉の意味が分からないので反発したとか、そういう話である、しかしそれらは作家の原点の話として、それなりに面白かった。

抽象と見られる辰野のモティーフが、実は昔はやったルーズソックスをイメージ化したものだったとか、会田が中国で書いた大作は絵の具が安かったからだみたいな話もあったが、このような作家としての楽屋落ち話はこのような場所でしか聞けないだろう。

ということで、会費1,000円のアーティストトークだが、僕にとっては1,800円で映画を観るよりずっと面白い体験であった。

銀座ではあとふたつ、アラーキーの展覧会を行っていたライカのギャラリーと、銀座4丁目交差点のそばのビルの8階にあるRICOHのRING CUBEギャラリーで開催中の「心で感じる写真展」に足を運んだ。

RICOHの展覧会は出展する写真家の名前をあえて伏せ、しかもすべての作品の作者が異なるという展示だったが、いずれの作品もとても作品の質が高いという印象。このビルの下はいつも沢山の人で賑わっているが、8階はちょっと別世界、おすすめである。

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