眼の快楽

中村真一郎「眼の快楽」(NTT出版)

この本は、中村真一郎が足を運んだ展覧会と、気に留まった絵についてのエッセイです。中村真一郎の著作を読んだのは初めてでしたが、豊かな学識を背景に彼の日常に入り込む絵との対話を綴っており、楽しく読みました。題材の絵も全てカラーで掲載しており、ところどころに挿入してあった彼のスケッチは、ジャン・コクトーのそれをほうふつとさせるなかなかしゃれたものでした。ちなみにピカソは、スケッチの早書きだけはコクトーにかなわないと言ったという逸話があります。

この本のところどころで、中村が体の不調を嘆いているのですが、調べてみると中村はこの本が完成した1996年の翌年に亡くなっていました。最後まで芸術に対するみずみずしい感性を失わなかった中村真一郎には、敬服する限りです。

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