非ジャンル性、ヘタウマ

少し前に横尾忠則に共感を覚えるとブログに書いたのですが、その理由は多分僕が彼の非ジャンル性に惹かれているからだと思います。

というのも、僕はある種アナーキーなまでにジャンルを無視すると言うか、徹底して個というものにしか興味がないタイプの人だからです。例えば、僕は音楽ではナット・キング・コールのファンですが、だからジャズが良いとか言う風には全然考えない。あくまでナット・キング・コールだから良いのであり、フランク・シナトラではダメなのです。

でも、ここがややこしいのですが、フランク・シナトラが嫌いかというと、そうでもなくて、ひとつだけお気に入りのアルバムがあります。

それは「Duets」という、シナトラが世界の著名なボーカリスト達と競演したアルバムです。アレサ・フランクリン、グロリア・エステファン、トニー・ベネット、シャルル・アズナヴール、ボノ、etc.

デュエットの相手はいずれもさすがの芸達者で、ため息が出るほどすばらしい表現力で唄います。で、シナトラはどうか、というと、これが見事なくらいに一本調子なのです。でもここが、実は素敵なところで、両者の個性が見事に調和しているのです。

つまり、僕が言いたいことは、シナトラの個性って、究極のヘタウマだと思うのです。この人の歌唱表現にバリエーションはほとんどありません。僕はこの人の歌を聞くたびに、(歌唱の最後が必ずフラットする)松任谷由美を思い出します。このふたりは、日米を代表するヘタウマ歌手だと思います。

(このふたりは多分そうでないと思うが)意図的かどうかは別にして、ヘタウマの歌も立派なひとつの個性だと思います。絵画で言えば、プリミティブ・アートあるいはアウトサイダー・アート(この表現はあまり好きになれない)と呼ばれる分野に相当するでしょうね。

繰り返しますが、僕はヘタウマの歌を否定しません。そこにはある種根源的な力というものを感じます。

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