メトロポリス

今日は自転車で図書館に行きました。手塚治虫コーナーで初期の代表作「メトロポリス」が眼にとまったので、その場で読んでしまいました。僕が読んだのは、後年の手塚が手を入れたものですが、最近の報道で確か、完全な原典版が復刻されるとのこと。

だいたい作者が後に手をいれた作品で、良くなったというのを聞いたことがありません。音楽の例をとれば、ブルックナーなんてかなりの分裂症的人物で、自分の作品に手を入れ続け、しまいには数限りないバージョンを生み出してしまいました。ブルックナーで一番良く演奏されるのは交響曲4番なのですが、これもやっぱり原典版が一番良い。

図書館の残りの時間は、橋本治の「ひらがな日本美術史」第2巻を途中まで読んでました。読むにつれ思うのは、全7巻のこのシリーズこそは、日本美術批評の歴史に燦然と輝く大傑作だということです。橋本はどのような作品でも、先入観というものを徹底的に排除した心で見ることが出来るという稀有な才能を有しています。さらに橋本は歴史に対する圧倒的な知識があるので、まるでタイムマシンを使うがごとく、同時代的に作品と向かい合うことが可能なのです。美術批評の大立者の高階秀爾なんかは、橋本のこのあまりに独創的な評論をどう位置づけているのかな、なんて余計なことを考えてしまいました。

こんなに面白いのにこのシリーズを借りる人はほとんどいません。ですから、僕は栞を挟んで、図書館に返しておくことにしました。来週も第2巻の続きから読み始めるつもりですが、多分栞が残っていると思います。

コメント

  1. Mr.X より:

    artjapanさん
    メトロポリス原作は読んだ事ありませんが、
    大友克洋脚本のDVDがあるのを思い出して、昨夜中に再鑑賞してしまった。
    その分、犬の散歩のあと昼近くまで寝ました。(笑)
    ティマ(ロボット)とケンイチ(人間)の愛ですね。
    評価はあまり良くないようです。
    でも、手塚治虫の作品にロボットと人間のこいう純粋な愛が描かれますが、
    私は好きです。
    サイレントのメトロポリスがあり、最近リメイクされたようですが、
    手塚治虫との関連はどうなんでしょう。
    そいつを見たくなりました。

  2. artjapan より:

    Mr.Xさん

    大友克洋脚本のDVDの方は僕は知らないのですが、どうやら原作とはかなり異なる内容みたいですね。少なくとも原作はスピード感のある活劇で、人間とその創造物の愛がメインのテーマではないです。

    フリッツラングのメトロポリスはDVDで見たことがありますよ。傑作の名に値する名作です。手塚治との関連は良く知りませんが、ストーリーは全然異なったものです。

    そういえば、ほとんど忘れていましたが、以前ロンドンでメトロポリスというミュージカルを見たことがあります。残念ながらあまり良いできではなく、以降それに関する評価さえ聞いたことがありません。フリッツラングのメトロポリスからインスピレーションを得たものであることは間違いないですが、既に忘れられた失敗作のひとつだと思います。舞台装置だけは大掛かりだったのを、かろうじて覚えています。

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