酒呑童子の首

11月 23

最近読んだ本:
・酒呑童子の首/小松和彦 (せりか書房)
・【図集】幕末・明治の生活風景 外国人の見たニッポン/須藤功(東方総合研究所)

「酒呑童子の首」は、小松和彦が中世の代表的な鬼退治譚である酒呑童子を題材に、民衆にとって鬼とはいかなる存在であったのか、そして鬼が住む異界がどのようにイメージされていたかを論考したものです。

酒呑童子の物語って、陰陽師・安部清明の占いにより、都の政情不安の原因が鬼=酒呑童子のしわざと判明する、というところから始まります。帝の命を受けた源頼光が渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武という四人の武将を引き連れ、途中に出会った3人の翁からさずけられた隠れ蓑と神酒の助けをかりて、大江山に住む酒呑童子率いる鬼の一族を滅ぼすという、まあ典型的な英雄譚です。

小松和彦は「鬼」を柳田国男的に、たとえば異界からの訪問者である「まれびと」の変形と規定したり、零落した神と解釈するのではなく、むしろ権力が危機に瀕した時に利用される征服の対象としての想像上の「外部」と見ています。また洞窟や滝に入り口があり常に四季がある場所として描いているところに、神仙思想の影響を見ています。

このあたりは、中世の非差別民に反権力、非日常の自由民を見た網野善彦的歴史分析とも異なり、鬼の世界に日本の生み出した豊かなイメージとしての異境を見ているといえます。

僕が常に魅せられて来たのは、幻想の帝国としての日本なのですが、その想像力の中で常に最後にやっつけられる悪役を演じ続けてきた鬼は、古今のいかなる英雄もかなわないスーパースターだと思います。

「幕末・明治の生活風景 外国人の見たニッポン」は、外国人絵師が描いた幕末から明治の日本の図集です。

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ゆったりとした時間の中にある様々な生活風景が興味深いです。例えば子供たちが遊ぶところを描いた図がいくつかありますが、多くの子供は背中に赤ん坊を背負って遊んでいます。また、簡素な町並みだけど、電柱がないため、風景が風景として成立しています。

我々は便利さと引き換えに心安らぐ景観を失ったということを、あらためて実感したしだいです。

読書

Posted by artjapan