通信関係という商売柄、この本はとても興味深かった。かなりの情報量が詰め込まれているにも関わらず一気に読んでしまった。著者はシリコンバレーに在住するフリーのジャーナリストで、WEBに掲載された著者の記事を僕はしばしば読んでいる。
著者によれば超集中と超分散という、両極端の効率化を推し進めた究極の形態が未来のクラウドだ。そしてその究極のクラウドに、既存のビジネスが不可避的に吸い込まれていく。この悪夢のような未来をあらわすために著者が考えた造語が「クラウド・ブラックホール」である。
僕は著者の予言はかなりの部分、本当になるだろうと思う。もはや悠長に「ものつくり」を語っている時間などないのが現実なのだ。それでは我々に対抗するオプションはないのか?
多分、コスト、効率、スピードなどのパラダイム上のビジネスで戦う場合、クラウド的アプローチに勝つチャンスは少ない。だからこれからの日本は極めるべきキーワードは、文化、美術そして自然だろう。例えば規模の拡大を求めない京都の老舗的なビジネスはひとつのモデルだと思う。
問題は硬直化した政治と教育のシステムだ。それらが先にブラックホールに吸い込まれてくれれば、日本にも十分チャンスがあるのだが。
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