先日TVで地底旅行のリメーク版の映画をやっていた。その番組は別に見なかったが、図書館でこの本を見かけたら無性に読みたくなってしまった。たぶん、潜在意識に残っていたのだろう。
奥泉光は「グランドミステリー」しか読んだことがないが、ちょっと得体のしれないストーリテラーである。でもこの人なら世界文学史上の傑作であるジュール・ヴェルヌの「地底旅行」をリメークできるかもしれない、と期待した。
ちょっと分厚い本なのだが、結構一気に読んでしまった。時は明治時代、ひょんことから主人公の絵かきが信玄の隠し財宝で一攫千金を狙う友人と、富士山麓の穴から地下深くに入り込み、地底の大冒険を繰り広げるというお話。ヴェルヌのオリジナルのお話の主人公リデンブロック博士(リーデンブロックという表記でないのが明治的)の地底旅行は実際にあったこととして話が進む。
途中までは、結構普通の冒険仕立てなのだが、話が進むに従い次第にホラ話の度合いが増してくる。最後には宇宙的なスケールに話が進んで科学SF調となる、と思いきや漱石の猫が出てきたりして、訳が分からない。
多分、奥泉光はあらかじめストーリーを考えておくタイプの作家ではない。自分が作り出したキャラクター達に自由に遊ばせた結果、話が進行するという創作手法だろう。
ところでヴェルヌは150年ほど前の人なのだけど、いまだに奥泉光を初め多くの作家や画家そして映画にインスピレーションを与え続けている。彼の創りだしたリデンブロック博士こそは、冒険活劇の永遠の原型だ。
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