ダ・ヴィンチ 天才の仕事

この本はレオナルド・ダ・ヴィンチの32枚の手稿を手がかりに、彼が実現しようとした発明を3DのCGで再現する試みを記録したものだ。実際、ダ・ヴィンチの絵画よりもスケッチの方が、彼が比類ない天才であったことを証明しているかもしれない。この本によればレオナルドこそは、技術のための視覚表現を作り上げた功労者であり、結果として現代の機械文明に大きな貢献をした。

レオナルドが残した手稿の内、空飛ぶ機械や装甲車などはよく知られているが、戦争のための複雑な兵器が多く残されている。また優れたリラの奏者であったレオナルドは楽器の設計図をいくつか残している。それらの手稿はいずれも実際に組み立てられた現物を見て描いたかのような精密な構造と立体感があり、レオナルドの3次元的な構成能力に人々は驚嘆してきた。

この試みでは例えば自走車と思われている手稿を元に、表紙のような3D画像を復元する。もちろん、レオナルドが書き残したのはあくまで手稿であり、設計図ではないのだから、工学的な観点および歴史的な分析から、当時レオナルドが創造しようとしたメカを推定しているに過ぎない。しかし恐らくその多大な労苦は、ある程度正確な復元となって報われていると思われる。

問題は、復元されたメカが精密に、そしてリアルに描かれれば描かれるほど、レオナルド特有のオーラが消え失せてしまう点にある。

おそらく、人はレオナルドの手稿を見た時に、レオナルドの天才、次元と時間を調節した視覚機能を少しだけ感じることができるのではないだろうか。そして、その感覚は例え最新のグラフィック技術を持ってしても、いや、高機能であればあるだけ、レオナルドから離れてしまうのではないか。

レオナルドは科学者であり、音楽家であり画家であった。そしてそれらを超越したところで人々を畏怖させるアーティストであった。凡人が現代のテクノロジーで天才の仕事を復元することは、ある意味可能だろう。だが感動や畏怖を伝えることは決してできないのだ。

 

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