古典のアップデート

アート

前の日曜日に行った赤レンガ図書館の新刊書コーナー(ここが充実しているのだ)で、見つけたのがこの本。劇場のための理論誌と銘打ってある。

最初は古典というキーワードにつられて手にとったのだが、関わっている人が凄い。監修が狂言の野村萬斎、表紙が大竹伸朗、インタビューしているのが小説家の京極夏彦、俳優の美輪明宏に落語家の柳家喬太郎・・・。僕には演劇を観る習慣はないし、知識もないのだが、これらの人たちが何を語るかという興味で借りてみた。

SPTとは世田谷パブリックシアターの略である。そこが年に一度、演劇における挑戦的なテーマを設定し、インタビューや論考をまとめているのがこの本らしい。その2010年のテーマが「古典のアップデート」だったということだ。

僕の住む世界とは違う能や狂言を中心に様々な言説が飛び交うのだが、たとえ背景が分からなくても、用語に不慣れでも、妙に面白い。演劇には特有の身体性とか同時性とかいう面があるにせよ、それも物語であることに違いはない。分からないテーマについての考察ばかりなのだが、語り手が卓越しているので、妙に戦慄し、時に納得するのである。例えば、美輪明宏が語る三島由紀夫の人となりとか、三島の「近代能楽集」と美輪とのかかわりなど、ちょっと反則というような面白さである。

後半は気鋭の劇作家や演出家へのインタビューだった。正直知っている名前はなかったのだが、それでも皆、それぞれに僕の想像力を喚起してくれる力があった。この本を読み終わって、既刊を読みたくなったのだが、板橋区図書館にも北区図書館にもなかった。その内に世田谷図書館から仕入れてみたいと思っている。

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