台詞と訳

今読んでいるアシモフのロボット小説集には、読んだことのある小説がいくつか掲載されている。ところが全て新訳なので、表現が昔と違うと感じることがある。もちろん文章を覚えているのは印象的な場面だけだ。特にユーモア小説の決めのセリフなんかは、昔大笑いしたのに笑えなくて、妙な違和感が残ったりする。

似たような経験は映画でもある。マリリン・モンローやジャック・レモンが主演した「お熱いのがお好き」は正に傑作と言えるコメディーだ(最近題材が古い・・)。何といっても、最後のセリフが秀逸なのだが、ここで同じような経験がある。

映画のストーリーは禁酒法時代、ギャングの暗殺を目撃したために追われることになったジャック・レモンとトニー・カーティス扮するバンドマン。ギャングの追跡を逃れるため、女性だけの楽団に女装して潜り込む。これだけでお笑いの要素満点なのだが、スラップスティックなドタバタの最後に、ジャック・レモンが大金持ちのお爺さんに惚れられ、挙句に求婚されてしまう。

進退極まったジャック・レモンがかつらをとって、ついに正体を明かす、「俺は男だ」。それに対するお爺さんの返答が、映画史上最も有名なセリフのひとつである「Nobody’s perfect!」だ。

僕はこの名作をTVでしか見たことがないのだが、このセリフの訳として3種類見た記憶がある。多分最も多い訳が「完璧な人間などいない!」である。
全く間違っていないが、これは凡庸な訳だ。

僕を最もがっかりさせた訳は「誰にも間違いはある!」である。こちらはほとんど誤訳といっても良い。間違った行為を鷹揚に許したから面白いわけではないからだ。

この面白さの本質は、男が女に化けるという背信を、お爺さんが性格の問題位に鷹揚に考えていることにある。

「誰にも欠点はある!」

これこそ最適な訳だと思うのだ。

最近はどうでも良いようなことだけ、しっかり覚えている。困ったものである。

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