図書館で芸術、歴史関係の本をいくつか借りました。で、最初に手に取った本は、ほぼ確実に面白いことが分っている赤瀬川原平でした。
「京都、オトナの修学旅行」は、美術史家の山下裕二と赤瀬川原平のコンビが日本美術をめぐって珍道中を繰り広げるシリーズの1冊です。今回は金閣、清水寺や桂離宮など、既にブランドとして記号化されてしまっている京都周辺の観光地を再度、オトナの目で見直してみよう、という企画です。なぜなら日本人が日本の古典を見るには、オトナの経験、モノに対する感覚的な経験が必要だから。
山下と赤瀬川は修学旅行よろしく、金閣から物件巡りを始めるのですが、やはり赤瀬川の「しろうと」の達人としての感想が抜群に面白い。例えば燃えて再建された金閣には美術ではなく観光名所としての「金ピカ」の価値を、東寺には逆に弘法大師の時から変わらない「古色」の価値を見ます。
東寺は、15体の国宝を有しながらも、観光名所としてのこぎれいさから大きく隔たっているのですが、それを「北海道の果ての漁師町に、包丁でぶつっと切っただけの魚がゴロゴロいっぱい並んでいる」と評するあたりが絶妙です。
京都御所については、京都の中心にある「抜け殻」だと言うのですが、これって東京の中心に「空虚」を見たロラン・バルトの知見が影響しているのでしょう。嵐山ではなぜか人間魚雷のある魚雷観音に寄り道して、「路上観察」的な観察を始めたりします。
赤瀬川の「乱暴力」に対し、山下の得意な等伯とか探幽の比較論も随所にちりばめられており、予想を裏切らず楽しかったです。
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