名だたる文筆家のエッセイが50本以上集められている。当たり前だが皆さすがに上手い。
ネットではブログというメディアが、エッセイに近いポジションを占めてきたと思う。最近はTwitterやfacebookなどの新興勢力の登場も相まって、僕らはリアルタイムに世界と常に相互作用する混然としたメディア環境の中にいる。
だからだろう、エッセイを読み進めていくと、次第にじれったくなる自分を感じる。どのエッセイも良く練られていることは間違いない。だけど既に言葉の熱が冷めてしまったように、現実との一体感を失ったように感じるのだ。
本はネットのメディアと異なり、ひとつの波紋が次々に飛び火していくようなスピードや破壊力を持ち合わせていない。それは普遍的な価値という意味では良いことかも知れないが、僕らは既に現代の魔法的メディア環境の虜である。
かつてマクルーハンはメディアをホットとクールに分類したが、本に書かれたエッセイはもはや絶対零度に近いクールなメディアに位置するのかもしれない。
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