ひらがな日本美術史

橋本治のひらがな日本美術史全7巻だが、この2年間ずっと赤レンガ図書館に行く度に少しずつ読んでいた。先日ついに最終巻に辿りついたのだが、連休中に読み終わろうと、この第7巻を借りて家で読んだ。

日本の近代の作家に対して橋本治が語る言葉の前にそもそも誰を取り上げるのかに興味があったのだが、近代の初めの作家についてはあまり驚くような選択ではなかった。高橋由一、黒田清輝、狩野芳崖、高村光雲、岸田劉生・・・。

橋本らしいと感じたのは、その後の作家の選択である。竹久夢二、梶原緋佐子、梅原龍三郎、佐伯祐三、棟方志功と続くが、特に竹久夢二の作品の解説は出色だった。最後から2番目に僕の好きな竹内六郎を取り上げていたのはうれしかった。そして最後に東京オリンピックのポスターを作った亀倉雄策を取り上げ、橋本治の語りは終わる。

橋本治は芸術新潮で2004年から2005年に掲載されたこのシリーズで、全く新しい日本美術通史を作り上げた。それはおそらく日本のみならず世界でも類を見ないような独創的な視点で貫かれた芸術論である。橋本はこれまで積み上げられた芸術の変遷、その歴史的な時間軸を全く無視して、その時代の作家の側に同時代的に降り立ち、その悩み、欲望、技術を明らかにした。 これは橋本治による橋本治のためだけの美術史であり、だからこそ通念としての芸術論を超越して普遍的な高みに察することができたと思う。

この全7巻は僕がこれまで読んだ書物中で最も影響を受けたもののひとつである。僕が多少なりとも批評的な精神を持ちえたとすれば、それは橋本治に依るところが大きいと思う。ついに読み終わってしまったことが、寂しく感じる次第である。

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