別役実のコント教室

別役実の「コント教室 不条理な笑いへのレッスン」 白水社

段々フィクションからノンフィクションと嗜好が変わってきた僕だけど、最近は単なる批評では何かもの足らず、特定のジャンルの教科書あるいは指南書を好んで読んでいる。

別役実の「コント教室」は、日本劇作家協会が主催した「劇作セミナー」の授業を単行本化したものである。先生である別役が劇の基本であるコントの基本を説明した後、生徒にコントの作成を宿題として出す。その後の提出されたコントに対する別役の指導が本書のメインである。

将来は劇作家とか脚本家を目指す人たちが受講しているのだろうが、驚くのは生徒たちの提出するコントのレベルが高いことだ。中にはかなり高度なテクニックを使っている場合もある。演じられたコントではなく書かれたコントなのだが、結構個性が出ており、読むだけで楽しい。

素性の良いコントが取り上げられているのだろうが、もちろん完全には程遠く、退屈な部分とか興ざめな部分が随所に感じられる。だけどそれらがなぜまずいのかは僕には全く分らない。別役はそれらの素材の欠点を的確に指摘し、どうすれば向上するかを理論的に説明していく。その過程がとてもスリリングで、へたな戯曲を読むよりずっと面白いと思う。

僕は別役の戯曲を舞台で見たことは実はないのだが、著作は結構読んでいる。昔特に好んで読んだのが、架空の事物をさもありそうに定義、記述する、「けものづくし」とか「魚づくし」とかの「づくし」シリーズである。油断もすきもない別役のことだから、今回の本の授業内容とか宿題のコントも全て別役の創作ではないかと疑ったのだが、後書きを読むとどうやらそうではなかったようである。

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