フリーエージェント時代の到来

フリーエージェント(FA)的な生き方や価値観は必ずしも全ての人に適している訳でもないし、世の中の全てがFAになることが社会として合理的なわけでもない。だが、現代の絶え間なく変化する社会は、FA的な働き方が組み込まれることで活性化し、社会全体として大きなプラスになることは間違いない。

FA時代の到来の可能性をこの本が描き出してから10年が経過した。その間に日本でFAが成長したかといえば、残念ながらそうではない。むしろ正社員と非正規という二値論的な世界観、正社員を増やすことは善、非正規的な働き方は悪という、社会全体としての失敗が約束されている古臭い社会主義的なドグマだけが生き残った。このような原始的な社会主義とポピュリズムの融合の当然の帰結として、雇用は減少の一途をたどり、特に若年層の雇用は非常に厳しい。

全然話は変わるが、なぜ僕が山をやるかと言えば、一言で言うと、山には自由があるからだ。山では基本グループで行動するが、最後のところは自己責任である。社会であれ、人生であれ、山歩きであれ、世の中にはリスクが厳然として存在する。そしてFAにおけるリスクとメリットの関係は、山歩きに近い。要するに個人としてリスクを引き受けて、自由な行動の帰結としての価値を得るのだ。

僕はずっと会社員として生きてきたが、FA的な生き方は常に尊敬してきた。僕が山をやるのも、ひとつにはFAとしてこれまで生きてこれなかったことへの忸怩たる思いがあるのかもしれない。もちろん、実際は組織的アプローチだからこそ参画できた巨大なプロジェクトもあるので、ないものねだりもあるだろう。

ひとつFAの可能性について思うのは、日本の社会が急速に老いていくことだ。日本の老人のポテンシャルは依然かなり高いので、それをFAとして社会が求めていくことにこそ、維持可能な社会としての未来があると思う。

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