犯罪

読みたい過去の小説がたくさんあるので、小説はもっぱら図書館で借りることにしており、最近の小説を買うことはまれだ。しかしGWということもあり、1冊買い求めたのが、「本屋大賞」で翻訳小説部門の1位となっていたフェルディナント・フォン・シーラッハの「犯罪」である。ちなみに芥川賞・直木賞は僕が面白いと思う小説が選ばれないので、とうの昔に見切りをつけている。

犯罪のショーケースのような短篇集だが、共通するのは犯罪者の確信である。描かれた犯罪者に罪の意識がないという訳ではなく、すべての犯罪にはそれぞれの理由があるというしごく簡単な事実が著者の世界観の根底にある。犯罪は個人的な理由で起こることもあるし、社会の歪が凝縮された結果であることもある。ハッピーエンドもあるが大抵は苦い結果が待っている。それを著者は、弁護人の視点を通じてたんたんと描く。

これはハードボイルドの系列に連なる作品だと思うが、読後感が爽快であるのは著者の力量によるものだろう。GWへの気分転換には良い作品だった。

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