夢の江戸歌舞伎

これは素晴らしい本だ。

何より絵が惹きつける。歌舞伎の舞台、初日の模様、稽古や背景の作成などの舞台裏の様子、大道具や奈落にいたる裏方の作業、多くの人が協力して舞台を作り上げていく様子が活写されている。

とにかくたくさんの人や道具が描かれているのだが、それらを大和絵の吹抜屋台風の俯瞰図として精密に配置している。手習いの子供をひとり各ページに登場させているのも気がきいている。歌舞伎版ウォーリーを探せといった趣向で、子供が見ても楽しめるだろう。

最後には各絵の時代考証を含めた詳細な解説がある。こちらはかなり専門的な内容だ。

この本には大人でもワクワクするような本格的な趣向が盛り込まれているのだが、ぜひ子供に見てもらいたい。もし美術や歴史の副読本として全てのこどもに配布したら、日本人の審美眼が一気に向上するだろう。

絵本というメディアの可能性は無限だ。

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