絵の中の物語

アート

これはヘンテコな本。

一言で言えばポール・デルヴォーの絵にミシェル・ビュトールがテキストを付けたということなのだけど、シュールレアリスムの正統的な作法とでも言うように、テキストと絵の関係が既に解体されている。デルヴォーの絵そのものが謎めいて秘密の匂いで満ちてるのだが、ミシェル・ビュトールのテキストはそれに輪をかけて奔放である。かろうじて、このふたつを結びつけるのがジュール・ヴェルヌの著名なSF「地球の中心への旅」の物語であり、この初期のSFの主人公である叔父のリーデンブロック教授を探す甥のアクセルが、この奇妙に分裂したテキストの語り手である。

地球の中心に向かうというのは自我の探求のメタファーであることは論を待たないが、この作品に充満するのは冒険というよりは幼年期の夢であり、フロイト的なエロスの匂いである。

ポール・デルヴォーのあまり知られていない作品が多く掲載されているのは素晴らしいのだが、残念なのは画像が小さくカラーでもないことだ。もし、大きなカラー図版だったら、もっとずっと楽しめる本となっただろう。

それにてもヘンテコだ・・・。

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