こころの眼

日常の写真

「一人一人の眼を始点に永遠に向かって広がり続ける空間、それは、私たちに何らかの印象を与えると、ただちに記憶となって閉ざされ、変容する。その一瞬を、あらゆる表現方法の中で写真だけが固定できる。私たちの相手は消滅する。」

アンリ・カルティエ=ブレッソンはロバート・キャパらと共に、1947年にマグナム・フォトを設立した。キャパの例に見るまでもなく、素晴らしい写真家は素敵な文章を書くことに決まっている。岡本太郎は教え魔のマン・レイから写真を伝授されたのだが、ブレッソンはマン・レイの写真に触発され、写真家の道を選んだ。

僕はブレッソンの写真のどこか詩的でかつ強固な構成を感じさせるところが好きだ。しかし、この本を読むと、彼もまたカメラを片手に世界中の事件に立ち向った勇敢な戦士であった事がわかる。この時代の著名な写真家は、カメラを方法論とし、事件をフィールドワークした文化人類学者だったと言えるだろう。

そう、人を感動させる背後には、何かしらの勇気がある。

ブレッソンも、フランス軍のレジスタンスとして戦い、ドイツ軍に捕らえられ、戦死したという噂のさなかにMOMAの回顧展に姿を現した、という逸話を残している。

福島から真っ先に逃走した日本の報道機関の発信するメッセージに何かしらの真実があるとすれば、事実に向きあうことを拒否してきた日本人の姿を先頭に立って伝えているということだろう。

あるいはそれは政治家の手柄かもしれない。

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