文豪はみんな、うつ

読書

木村敏の「時間と自己」では、哲学者や文学者における精神疾患と彼らが垣間見た時間についての考察があった。例えばドストエフスキーはてんかん持ちであった。その興味の延長線上で借りてみたのが、この本である。

明治から昭和初期の日本の著名な文学者の多くが重病の精神疾患を患っていたことは有名で、太宰治のように自殺に至った例も多い。著者は夏目漱石から川端康成までの10人の文学者がどのような精神疾患を患っていたのかを、彼らの人生と文学の歩みから読み解いていく。

著者によれば、漱石、有島武郎や芥川龍之介はうつ病であった。しかし、中原中也は統合失調症、川端康成は睡眠薬依存が疑われるということである。

ただ、著者の分析は文学者の振る舞いから精神疾患を推定するだけで終わっているのがちょっと残念である。例えば精神疾患と芸術との関係を考察するとか、その分析をもって彼らの創造性の秘密に迫るとか、そういう展開があれば、もっと読み応えのあるものになっただろう。

安っぽい題名ほど興味本位の本でもないが、考えさせるところがほとんどないのがちょっと悲しい。

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